特定技能の自社支援と委託を比較|要件・業務・費用と2027年の改正
この記事の要点
- 自社支援には、支援責任者・支援担当者の選任、外国人が理解できる言語での支援、記録の保管などの基準があります。経験の要件は「過去2年の受入れ実績」だけでなく、ほかの選択肢もあります。
- 登録支援機関に支援の全部を委託すれば、支援体制の基準を満たすものとみなされます。ただし、届出などの受入れ企業としての責任は残ります。
- 2027年4月からは、支援責任者・担当者を事業所ごとに常勤の役職員から選ぶこと、担当者1人あたり外国人50人未満などの新しい要件が、自社支援にも適用されます。
- 費用は「委託費がかかるか」だけでなく、担当者の時間、通訳、移動、記録の管理まで含めて比べることが大切です。
1号特定技能外国人を受け入れる企業には、仕事と生活を支える「支援」の義務があります。支援は、自社で行うことも、登録支援機関に委託することもできます。
外国人社員が増えてくると、「自社でできないか」「今の委託の内容と費用は妥当か」と考える企業が増えます。この記事では、2026年10月26日時点の公式資料をもとに、二つの方法を比べます。ラムナーリンクは登録支援機関として委託をお受けし、自社支援の体制づくりのお手伝いもしています。どちらか一方を勧める立場ではないことを前提にお読みください。
結論:三つの方法の違い
| 観点 | 自社支援 | 一部を委託 | 全部を委託(登録支援機関) |
|---|---|---|---|
| 支援体制の基準 | 受入れ企業が満たす | 受入れ企業が満たす | 満たすものとみなされる |
| 支援を行う人 | 自社の支援責任者・支援担当者 | 自社と委託先で分担(範囲は支援計画に明記) | 登録支援機関 |
| 年1回の定期届出 | 受入れ企業が提出 | 受入れ企業が提出 | 受入れ企業が、登録支援機関の実施状況も取りまとめて提出 |
| 社内に残る業務 | すべて | 委託しない部分 | 届出、雇用契約の管理、委託先との連携など |
| 主な費用 | 担当者の時間、通訳、移動、記録の管理 | 委託した範囲の費用と、社内の業務 | 委託費(外国人本人には負担させられない) |
全部を委託しても、受入れ企業としての責任がなくなるわけではありません。雇用契約を守ること、届出を出すことなどは、受入れ企業の役割として残ります。
自社支援の要件(支援体制の基準)
自社で支援を行うには、省令(特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令)で定められた基準を満たす必要があります。主な内容は次のとおりです。
- 経験の要件と選任:次のいずれかに当てはまり、支援責任者と、外国人が働く事業所ごとに1名以上の支援担当者を選んでいること
- 過去2年間に、就労が認められる在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能など)で在留する中長期在留者の受入れや管理を適正に行った実績がある
- 過去2年間に、そうした在留資格の中長期在留者の生活相談の業務に携わった経験がある役職員の中から選んでいる
- これらと同程度に支援を適正に行えると認められる人の中から選んでいる
- 言語:外国人が十分に理解できる言語で支援できる体制がある
- 記録:支援の状況を文書で残し、雇用契約が終わってから1年以上保管する
- 中立性:支援責任者・支援担当者が、その外国人を監督する立場にない
- 過去の実績:過去5年以内などに、支援計画にもとづく支援を怠ったことがない
- 面談の体制:外国人本人と、その監督をする立場の人と、定期的に面談できる体制がある
「過去2年間に外国人の受入れ実績がないと、自社支援はできない」と説明されることがありますが、経験の要件はいずれかに当てはまればよく、実績だけが条件ではありません。ただし、留学生のアルバイトなど、就労が認められる在留資格以外の外国人を雇った経験は、受入れ実績の対象外です。どの要件に当てはまるかは、運用要領で確認してください。
また、直属の上司を支援担当者にすると、「監督する立場にない」という基準との関係で問題になることがあります。現場の上司と支援担当者は分けて考えるのが基本です。
2027年4月から変わる支援体制の要件
出入国在留管理庁は、2027年4月1日から、支援体制の要件を改正すると公表しています。自社で支援する企業にも、次の①②③⑤が適用されます。
| 改正点 | 内容 | 自社支援 | 登録支援機関 |
|---|---|---|---|
| ① 選任 | 支援責任者と支援担当者を、支援を行う事業所ごとに、常勤の役員または職員から1人以上選ぶ(責任者と担当者の兼務は可) | 適用 | 適用 |
| ② 従事者 | 支援業務に従事できるのは、支援責任者・支援担当者に限る | 適用 | 適用 |
| ③ 講習 | 支援責任者に、入管法や労働関係法令などの養成講習の受講を義務付ける(当分の間は、修了していなくても差し支えない) | 適用 | 適用 |
| ④ 委託を受ける数 | 支援担当者1人あたり、委託を受ける受入れ企業は10未満 | ― | 適用 |
| ⑤ 支援する人数 | 支援担当者1人あたり、支援する外国人は50人未満 | 適用 | 適用 |
⑤は「50人未満」なので、外国人が50人なら支援担当者は2人必要です。
なお、事業所ごとに支援担当者を置くことは、今の要件でも必要です。2027年4月から新しく加わるのは、支援責任者・支援担当者を「支援を行う事業所」ごとに常勤の役職員から選ぶことや、支援業務に従事できる人を限ることです。「支援を行う事業所」の範囲は、運用要領などの公表を確認してください。自社支援を続ける企業、これから自社支援に切り替える企業は、今の体制が現在の要件と2027年4月の要件の両方に合っているかを確認しておきましょう。
2025年4月の改正で変わった届出と面談
2025年4月1日から、届出と面談のルールが次のように変わっています。
- 定期届出は年1回に:四半期ごとの届出から、年1回に変わりました。毎年4月1日から翌年3月31日までの分を、4月1日から5月31日までに提出します。受入れ・活動・支援の実施状況は、一つの届出書(参考様式第3-6号)にまとめられました。
- 全部委託でも届出は受入れ企業から:登録支援機関に全部を委託している場合も、受入れ企業が登録支援機関の実施状況を取りまとめて提出します。
- 定期面談は3か月に1回以上のまま:頻度は変わっていません。年1回になったのは「届出」で、「面談」ではありません。
- オンライン面談は条件付きで可能に:本人の同意を得ること、録画を雇用契約の終了から1年以上保管することなどが条件です。受け入れて最初の面談などは対面が望ましく、少なくとも年1回は対面が望ましいとされています。
- 支援実施困難の届出(自社支援のみ):支援の実施が難しくなった事情を知った日から14日以内に届け出ます。全部を委託している場合は不要です。
- 地域の共生施策への協力:市区町村から共生施策への協力を求められたら応じること、市区町村への協力確認書の提出、支援計画に確認した市区町村名などを書くことが加わりました。
自社支援で発生する業務(時期別)
| 時期 | 主な業務 | 記録・様式 |
|---|---|---|
| 在留申請の前 | 支援計画の作成(支援責任者・担当者、確認した共生施策の内容を記載) | 支援計画書 |
| 入国前・在留資格の変更前 | 事前ガイダンス(対面またはテレビ電話など) | 確認書(参考様式第5-9号) |
| 入国時・帰国時 | 空港などへの送迎 | ― |
| 入国直後 | 住まいの確保、生活に必要な契約の支援、生活オリエンテーション、役所の手続きへの同行 | 確認書(参考様式第5-8号) |
| 継続して | 日本語学習の機会の提供、日本人との交流の促進 | ― |
| 随時 | 相談・苦情への対応 | 相談記録書(参考様式第5-4号) |
| 3か月に1回以上 | 本人と、監督をする立場の人との定期面談 | 定期面談報告書(参考様式第5-5号・第5-6号)、オンラインなら録画 |
| 会社の都合で契約を終えるとき | 転職の支援 | ― |
| 年1回(4月1日〜5月31日) | 定期届出 | 参考様式第3-6号 |
| 事情を知ってから14日以内 | 支援実施困難の届出(自社支援のみ) | 参考様式第3-7号 |
| 常に | 支援の記録を、雇用契約の終了から1年以上保管 | ― |
事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談への対応、定期面談は、外国人が十分に理解できる言語で行う必要があります。通訳を同席させることはできます。
費用の比べ方
自社支援にすれば委託費はかかりませんが、費用がゼロになるわけではありません。比べるときは、次の項目を並べてみてください(金額は企業や委託先によって大きく違うため、ここでは項目だけを示します)。
| 費用の項目 | 自社支援 | 全部を委託 |
|---|---|---|
| 担当者の時間 | すべての支援と記録・届出の時間。事業所ごとに支援担当者が必要(2027年4月からは常勤の者から選ぶ) | 委託先との連絡、監督者としての面談への対応、届出の取りまとめ |
| 通訳・翻訳 | 社内で対応するか、外部の通訳を手配 | 委託費に含まれるかを契約で確認 |
| 移動 | 空港への送迎、役所への同行、対面での面談 | 委託費に含まれるか、別料金かを確認 |
| 記録の管理 | 多言語の資料作り、確認書や面談報告書の作成と保管、録画の保管 | 委託先が作成し、企業は内容を確認 |
| 研修 | 2027年4月からの支援責任者の養成講習 | 委託先の負担 |
| 委託費 | なし | 毎月などの委託費 |
| 見えにくいリスク | 担当者の退職や異動で体制が途切れること、休日や夜間の相談 | 委託先によって支援の質に差があること |
なお、支援に要する費用は、直接か間接かを問わず、外国人本人に負担させることはできません。委託費を給与から差し引くなどの方法もできません。
自社支援が向いているか:判定チェックリスト
多くに当てはまる場合は、自社支援を検討できます。当てはまらない項目が多い場合は、全部を委託するか、体制を整えながら段階的に自社支援へ移る方法が現実的です。支援の一部だけを委託する場合は、委託する範囲を支援計画に明記する必要があります。定期面談のように、誰が行うかが決められている業務もあるため、分担を決める前に運用要領(別冊)で確認してください。
委託から自社支援へ切り替えるときの順番
- 新しい体制が支援体制の基準を満たすかを確認する(2027年4月以降の要件も含めて)
- 支援計画の変更と、委託契約の終了日の時期を合わせる
- 委託先から、それまでの支援の記録を引き継ぐ
- 必要な届出を確認し、期限までに提出する
切り替えの途中で支援が途切れないように、契約の終了日より先に、新しい体制での支援の開始日を決めておくことが大切です。
ラムナーリンクの見方(制度の説明ではなく、私たちの考えです)
自社支援の良さは、外国人社員の様子を、毎日顔を合わせる会社自身が把握できることです。一方で、担当者一人に負担が集中すると、異動や退職のたびに支援が途切れてしまいます。私たちは、記録の書式と期限の管理を先に整え、担当者が替わっても同じ水準で続けられる仕組みにしてから、自社支援に移ることをおすすめしています。
よくある質問
過去に外国人を受け入れたことがなくても、自社支援はできますか?
経験の要件は、就労が認められる在留資格の外国人の受入れ実績のほか、そうした外国人の生活相談の業務に携わった経験がある役職員を選ぶことなどの選択肢があり、いずれかに当てはまればよいとされています。どれに当てはまるかは運用要領で確認してください。
全部を委託すれば、会社は何もしなくてよいですか?
支援体制の基準は満たすものとみなされますが、年1回の定期届出や雇用契約に関する届出、雇用契約の内容を守ることなど、受入れ企業の責任は残ります。
定期面談はオンラインでもよいですか?
本人の同意や録画の保管などの条件を満たせば、オンラインで行えます。最初の面談や、少なくとも年1回は対面が望ましいとされています。
支援の委託費を、外国人本人に負担してもらえますか?
できません。支援に要する費用は、直接か間接かを問わず、外国人本人に負担させてはならないと定められています。
2027年4月の改正で、何を準備すればよいですか?
支援を行う事業所ごとに常勤の支援責任者・支援担当者を選べるか、担当者1人あたりの外国人が50人未満になっているかを確認してください。支援責任者の養成講習については、出入国在留管理庁が案内を掲載しています。
まとめ
自社支援と委託のどちらが良いかは、外国人社員の人数、拠点の数、社内で支援に充てられる人と時間、必要な言語によって変わります。2027年4月からは自社支援の要件も変わるため、今の体制を一度点検しておくと安心です。
ラムナーリンクでは、登録支援機関としての委託と、自社で支援できる体制づくりのご相談(体制の設計、記録の書式、期限の管理など)の両方をお引き受けしています。申請書類や届出書の作成が必要な場合は、行政書士と連携します。どちらが合うか分からない段階でも、ご相談ください。
出典(公的機関の資料)
この記事は、公開日または更新日の時点で確認できた情報にもとづく一般的な説明です。制度は変わることがあります。個別の事案は、出入国在留管理庁などの関係機関や、行政書士・弁護士などの専門家にご確認ください。編集方針